Oss利用企業はoss開発を支援してほしい

先日同僚と酒の席で話をしていた。

僕「最近OSS書けてる?」
同僚「書けてないです。仕事してたら書く暇なくないですか」

1年前まではリモートのパートタイムで働いていた彼としては、週5日フルタイム勤務になってから使える時間が大幅に減っただろうことは簡単に想像がつく。

とはいえ、働かなければ生活費が稼げない。

「どうにか時間を作って開発するしかないね」

僕個人としては若い彼にはもっとOSS活動をしてもらいたいし、うちの会社に入ってからOSS活動ができなくなったと言われるのは入社のときに間に入った自分としては心苦しい。そんなことを考えながら苦い顔をしていると、反対に質問された。

「深町さんはOSS書いてますか? どうやって時間作ってますか?」
「いまは育休中で育児に忙しいから、時間は取れたり取れなかったり」
「仕事してるときはどうでしたか?」
「うーん…僕もあんまり取れてたわけじゃないね」

翻って自分のことを考えると、この若者にアドバイスできるほどにうまく時間を作れていたわけではない。仕事終わったら急いでご飯食べて、気づけばもう深夜なんてことはよくある。仕事が終わって帰宅したらクタクタで頭が働かないという日がほとんどである。定時で帰ることも多いが、残業で帰りが遅れることも珍しいというほどでもない。

1日24時間

働きながらOSS活動というのはそもそも無理があるのだろうか。万人1日24時間あるはずだ。時間の使い方が下手なだけではないか。そう思って我々は、自分たちが24時間をどのように使っているかを計算した。

「一日何時間寝たら十分かな?」
「8時間寝ないときついです」

8時間は比較的長い睡眠時間だと思うが、必要な睡眠は人によって違うので彼にとってこれを短くするのは難しいだろう。彼と話す中で睡眠障害っぽいなと感じることもあるのでこの睡眠時間は重要である。

残り16時間。

「毎日定時で働くと8時間だよね」
「はい」

残り8時間。

「昼休みが1時間」

残り7時間。

「通勤が片道1時間なので、2時間です」

残り5時間。

「晩ごはん食べるのはどれくらい?」
「帰って1時間くらいですかね」

残り4時間。

「朝の支度はどれくらい?」
「30分もあれば」

残り3時間30分。

「あと風呂か。そういえば良質な睡眠を取るには睡眠の2時間前には風呂入ってPCとかスマホとか見ないようにしなきゃだよ」
「そもそも今もベッドに入って寝付けるまでに2時間くらいかかります」

残り1時間30分。

フリータイム1時間30分

「こんなものかな。空き時間があと1時間30分あるじゃん」
「1時間30分ありますね」

僕が最初に想像していたほどには時間がなくてちょっと笑いそうだったが、こんなにあるじゃん!という顔をしてとりあえず彼の反応を見る。

「よし、じゃあOSS活動できるかな?」
「そうですね……でも、他のすべてを投げ売って、ようやく1時間30分しかないんですね」

まあ、そうだ。家に帰ってぼーっとはてなブックマークを見ていたら1時間30分なんてすぐに溶ける。

「そうだね」
「仕事は8時間あるのに」

もっともな話だ。仕事は8時間もあるのに、プライベートで使えるのは1時間半しかない。週5日の平日をこうして我々は生きている。

とはいえ趣味の活動と考えれば仕方のないことかもしれない。「好きでやってるんでしょ?」という言い方でこの話を終わることもできるだろう。ゲームをする時間が足りない、という話ならそうだ。けれども、OSS活動に関しては必ずしもそうやって切り捨てられないと僕は思う。

弊社では開発の中でオープンソースプロダクトを使っている。その中には個人が作ってメンテナンスしているライブラリも多く含む。依存していると言ってもいいレベルでプロダクトのコアとなる部分にまでOSSは使われている。

その中には僕が作ったものもある。主要なものだとWebフレームワーク (Utopian)、O/Rマッパー (Mito)、依存ライブラリマネージャー (Qlot)、Webサーバー (Woo)など。これらがどのように作られたか。数年前から仕事をしながらやりくりした細切れの時間を使って完成させたものや、会社を辞めて無職期間中に作ったものばかりである。

こういった個人が余暇に心血を注いで作ったものに弊社のプロダクトは依存しているわけである。

それにも関わらず、仕事をしながらOSS活動ができないというのは問題だと思う。将来的に生まれたであろうプロダクトを犠牲にしているという点で損をしているし、倫理的にも個人の努力に企業がフリーライドしているとも言える。

実際、僕自身が仕事をしながらOSS活動を十分にできているとは言えない。どれくらい取れていないのかというと、日常的に報告されるIssue/PRの数は、消化数よりも多い。つまりIssue/PRは増え続ける一方である。現在openなものは全プロダクトで180個くらいある。ライブラリの品質を十分に維持できないことは利用する企業にとって直接的な不利益となる。

OSS Friday

弊社ポケットチェンジでは今年から、毎週金曜日を OSS Friday と呼んで、2時間だけチーム全員がOSS開発をする時間を設けている。「2時間は短い」という声はあるし、人によってはインタラプトがあって2時間も取れないこともある。実際、先に話していた同僚もこの制度だけでは十分な時間が取れているわけではなさそうだ。けれども社内合意を最小限としてお試しで始める時間としては悪くないと思っている。

OSSを使う企業はOSS開発を支援してほしい。社員にOSS活動の時間を与える以外にも、会社の近くに住めるように近距離通勤手当を出すというようなものも支援になりうる。個人の努力に頼り切るのでなく、何かしらの形で企業が積極的に歩み寄るほうが健全だと思う。

念の為に言うと、僕個人がOSS活動が十分にできていないことに不平を言いたいのではないし、OSSを支援しない企業はダメだよねという同意を読者に求めているのでもない。企業と個人開発者のお互いの将来のためにOSS活動を何かしら支援してほしい、という個人的な願望である。

近年、個人のGitHubアカウントの提示を面接時に求める企業も増えている。OSS活動を評価して入社させるならば、それを継続できるような支援も必要ではないか。OSSが使われるだけでなく、OSS活動を支援する企業も増えていけばいいなと夢見ている。

面接でGitHubアカウント確認したりOSS活動をしていることを評価するのに、いざ業務ではOSS活動するのは禁止とか意味がわからないから好きに開発すればいいと思う

— fukamachi (@nitro_idiot) July 21, 2018